
動物の細胞は周囲が空いていると増殖して隙間を埋め(だから傷が治る),過度に混み合っていると増殖をやめて特殊化したり死んだりする。周囲からの圧縮力や張力に応じて遺伝子のプログラムが切り替わるらしい。だが機械的な力が生体反応にどのようにして変換されているのだろう。その仕組みがようやくわかってきた。著者のチームは「YAP/TAZ」と呼ばれるタンパク質が重要な役割を演じていることを突き止めた。このスイッチ切り替えによって,幹細胞がどんな種類の細胞になるかが決まり,不適切な力を受けるとがん化する場合もある。細胞が力に応答する仕組みを探る「メカノバイオロジー」の最前線を解説する。
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著者
Stefano Piccolo
伊パドバ大学の分子生物学の教授。細胞がどのようにして周辺の環境を感知し,その情報を使って組織を構築しているかについて研究している。
原題名
Twists of Fate(SCIENTIFIC AMERICAN October 2014)