
実験物理,理論物理に続く第3の研究方法,計算物理学を駆使して
スーパーコンピューターの中に「もう1つの現実」を創り上げ
いくつもの未知の現象を解明するカギを見いだした
シリカ(SiO2)が結晶化すれば輝く透明な石英(水晶)になる。それに高い圧力をかければ,水晶という形以外にも色々な構造を取る。まるで変身するかのようだ。高圧のかかる地球内部の深いところで,シリカがいったいどういう状態になっているか,厳密に知りたい……。修士論文を終えて一段落していた常行真司に,全く違う世界から新しい問題が持ち込まれた。これが,計算物理学の旗手として知られる常行の出発点となった。(文中敬称略)
常行真司(つねゆき・しんじ) 東京大学大学院理学系研究科教授。1961年愛媛県生まれ。80年東京大学入学,物理学科に進学。84年同大学院理学系研究科に進む。87年同助手,92年東京大学物性研究所助教授,2002年東京大学大学院理学系研究科助教授,07年から現職。2010年から計算物質科学イニシアティブ(CMSI)統括責任者。2001年,日本IBM科学賞受賞。