日経サイエンス  2015年4月号

アリをまねるクモ

X. ネルソン(カンタベリー大学)

 動物界はペテン師であふれている。生物が別種の生物に似た形態に進化する「擬態」について述べた教科書をざっと見れば,実に様々な例が載っているはずだ。サンゴヘビをまねたキングヘビ。ハチに扮装したハナアブ。そして,それほど知られてはいないものの多くの点でさらに魅力的なのがアリグモ属として知られるハエトリグモの仲間で,どこから見てもアリなのだ。アリグモに関する近年の研究によって,擬態がかつて考えられていたよりもはるかに複雑であることがわかった。天敵の目をくらます「ベイツ型擬態」と獲物を欺く「攻撃的擬態」だけでなく様々な理由があり,擬態によって得られる利点と引き換えに,その代償も払っている。

 
 

【スライドショー】These Amazing Spiders Look Remarkably Like Ants
 

 

再録:別冊日経サイエンス206「生きもの 驚異の世界」

著者

Ximena Nelson

ニュージーランドのクライストチャーチにあるカンタベリー大学で動物行動学の講師を務めている。動物のコミュニケーションと認知を,特にハエトリグモと鳥類を中心に研究している。

原題名

The Spider’s Charade(SCIENTIFIC AMERICAN December 2014)

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