日経サイエンス  2015年4月号

植物状態の人との対話

A. M. オーウェン(加ウェスタンオンタリオ大学)

 脳に外傷を負って意識を失ったままの状態,いわゆる植物状態と呼ばれる人は,本当に何もわからない状態なのだろうか? もしかたら反応できないだけで,私たちの会話を聞いているのではないか──。著者は植物状態の人の中に,隠れた意識があるケースが存在することを,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)でつきとめた。一見,何の反応もしていないように見えても,「あなたには兄弟はいますか。イエスならテニスをしているところ,ノーなら自宅を歩き回っているところを想像して下さい」といった質問に正確にイエス/ノーを返す患者がいたのである。身体は動かなくても声は聞こえ,頭の中は動いている。そういう例は確かに存在するらしい。

 

【関連動画】Regaining Consciousness: One Patient’s Story

 
 
再録:別冊日経サイエンス207「心を探る 記憶と知覚の脳科学」

著者

Adrian M. Owen

カナダのウェスタンオンタリオ大学に所属,認知神経科学および画像診断分野で,カナダ政府が認定するカナダ・エクセレンス・リサーチ・チェアの地位にある。意識障害を引き起こす脳損傷と,神経変性疾患の認知への影響を研究している。

原題名

Is Anybody in There ?(SCIENTIFIC AMERICAN May 2014)

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