日経サイエンス  2015年3月号

特集:未来を拓くイノベーション

ゲノム科学を変えるCRISPR

M. ノックス(フリーライター)

 CRISPR(クリスパー)と呼ばれる新しいゲノム編集方法が生命科学に革命を起こそうとしている。生物のゲノムを改変する方法は1970年代から知られてきたが,DNA上の狙いの場所を切断して改変するためにその都度その配列に合った切断酵素を合成する必要があり,非常に手間がかかる。これに対し細菌の免疫防御機構に基づくCRISPRは格段に速く,安く,容易にゲノム編集を実行可能だ。応用技術の商業化を目指す企業に多くの資金が注がれ,HIV感染症や統合失調症などの疾患に対するCRISPRベースの治療法がすでに模索されている。一方,生物のゲノムをあまりにも簡単に改変できてしまうため,悪影響を懸念する声もある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス208「生命解読」

再録:別冊日経サイエンス231「アントロポセン──人類の未来」

著者

Margaret Knox

コロラド州ボルダーを拠点に活躍するフリーのライターで編集者。

原題名

The Gene Genie(SCIENTIFIC AMERICAN December 2014)

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CRISPR