
特定の遺伝子を働かないようにしたマウスで
遺伝子の働きが脳と行動にどのように影響しているかを調べる
いずれ人間の個性や性格も明らかになるかもしれない
マウスでヒトの病気を調べることは可能か。2013年“poor” と断じられたモデルマウスの有用性を,2014年に“great” と逆転し,マウス研究者たちの熱い視線を浴びたのが,藤田保健衛生大学の宮川剛だ。2014年8月4日付の米国科学アカデミー紀要に,「炎症性疾患のモデルマウスの遺伝子発現はヒト疾患のそれをよく反映する」と題した論文を発表。前年に発表された論文のタイトルをそのまま,ただし“poorly mimic”(ほとんど反映しない) とされていた部分を“greatly mimic”(よく反映する)とひっくり返して世に問うた。 (文中敬称略)
論文は大きな反響を呼んだ。Science誌は「炎症論争に再点火」と題した解説を掲載。宮川のもとには世界中のマウス研究者から次々と激励のメールが舞い込んだ。「こんなことは初めて」と宮川は言う。
宮川剛(みやかわ・つよし) 藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授。 1970年東京都生まれ。97年東京大学で心理学の学位を取得。理化学研究所脳科学総合研究センターに在籍後,渡米し,マサチューセッツ工科大学ビコワー学習機能研究センター主任研究員,京都大学大学院医学研究科助教授などを経て,2007年に現職。自然科学研究機構生理学研究所行動代謝分子解析センター客員教授を兼任。