
メタンが氷に封じ込められた形で海底に存在するメタンハイドレート。その資源量は膨大で,石炭・石油・天然ガスなど既知の化石燃料の総埋蔵量を上回るという推定もある。日本は世界に先駆けてメタンハイドレートの海底からの試掘に成功し開発競争をリードしているが,この「宝の山」には懸念も付きまとう。海水温が上昇すればハイドレートからメタンが流出して大気中に達し,地球温暖化を加速する恐れがある。また,ハイドレート鉱床が地震でかく乱されることで,急膨張して津波を引き起こすことが心配されている。ハイドレートはどのようにして形成され,どんな性質を持っているのか,その正体を見極めるための研究が進んでいる。
再録:別冊日経サイエンス214「人類危機 未来への扉を求めて」
著者
Lisa Margonelli
著作家。「Oil on the Brain: Petroleum’s Long, Strange Trip to Your Tank」の著者。Scientific American/Farrar, Straus and Giroux から刊行予定のシロアリに関する本を執筆中。
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「ツンドラの湖に潜むメタン」,K. W. アンソニー,日経サイエンス2010年3月号
原題名
An Inconvenient Ice(SCIENTIFIC AMERICAN October 2014)