日経サイエンス  2015年1月号

がん免疫療法の新アプローチ

J. D. ウォルコック(スローン・ケタリング記念がんセンター)

抗がん剤や放射線治療が腫瘍を直接攻撃するのに対し,免疫療法は身体自身の防御機能を引き出して悪性腫瘍と闘わせる。従来の免疫療法のほとんどは,免疫細胞の力を増強してがんを攻撃しようとしていた。アクセルを踏んで車を加速するようなやり方だが,残念ながら効果はまちまちで,がんの免疫療法は主流にはなり得ないとの悲観論が多かった。これに対し近年,がん細胞が免疫応答を抑えている仕組みが解明され,このブレーキを外してがんを攻撃する新アプローチが登場,悪性黒色腫などを対象にした臨床試験で注目すべき効果が得られている。日本の医薬品メーカーがつい先ごろ製造販売の認可を取得した新薬もある。

 

【関連動画】著者のウォルコックが自身の研究について語ったもの。


 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Jedd D. Wolchok

スローン・ケタリング記念がんセンター(ニューヨーク)の黒色腫・免疫療法科の主任。製薬会社であるブリストル・マイヤーズスクイブ,メルク,メドイミューン,EMDセローノの顧問を務めているが,この記事で紹介した治療法をめぐる経済的利害関係はない。

原題名

Cancer's Off Switch(Scientific American May 2014)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

腫瘍悪性黒色腫抗体医薬免疫療法T細胞CTLA-4PD-1