
がんを物理学の視点から研究することで,新しい治療法が見えてきた。元工学者という異色の経歴を持つ著者が,腫瘍内の血管と腫瘍に働く力の関係を解明。腫瘍中に生じる硬いコラーゲンが,血管を圧迫して流れを悪くしていることをつきとめた。そのために抗がん剤が腫瘍の隅々まで行き渡らず,期待した効果が得られない。また腫瘍が低酸素状態になって免疫細胞の働きが抑制され,悪性度の高いがん細胞のみが生き残ってがんの悪性度が高まるという。高血圧の薬として広く使われているアンジオテンシン阻害薬がコラーゲンを減少させることが動物実験などから示唆されており,現在,臨床試験が進んでいる。
【関連動画】腫瘍内部に働く圧力
著者
Rakesh K. Jain
ハーバード大学医学部の腫瘍生物学のA. W. クック教授で,同大学にあるマサチューセッツ総合病院・放射線腫瘍学部門のE. L. スティール腫瘍生物学研究室室長でもある。米国科学アカデミーと米国技術アカデミー, ならびに米国医学院のメンバーである。これらの3つに選ばれたのはこれまでに20人しかいない。
原題名
An Indirect Way to Tame Cancer(SCIENTIFIC AMERICAN February 2014)
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がん/腫瘍/血管/耐性/膵臓がん/マトリックス/間質液圧/コラーゲン/ヒアルロン酸/アンジオテンシン阻害剤