
スマホやパソコンに使われるリチウムイオン電池より
はるかに大容量の蓄電池となるナトリウムイオン電池
課題だった寿命の壁を突破し,実用化に王手をかける
5月,東京理科大学の駒場慎一は,米ロサンゼルス郊外にある高級リゾート地のホテルで,カリフォルニア工科大学が創設した,革新的な環境技術を表彰する「RESONATE賞」の初の受賞者として,記念式典に臨んだ。米の経済誌Fortune が主催する持続可能性に関する会議「ブレインストーム・グリーン」の一環だ。米国を代表する経済人や政治家たちを前に,他の4人の受賞者とともにあいさつし,安全でコストも低いナトリウムイオン電池が今後,世界の輸送や次世代電力網のスマートグリッドに大きな役割を果たすだろうと語った。 (文中敬称略)
寿命の壁を越える
ナトリウムイオン電池は,リチウムイオン電池に続く新しい2次電池だ。海水から容易に原料のナトリウムを調達できる上,大容量かつ大出力も実現しやすい。しかし寿命(充放電の繰り返し回数)が短いという欠点を克服できず,21世紀に入っても実用化は不可能ではないかと言われ続けてきた。この問題を克服し,一気に産業応用が視界に入るところまで持ってきたのが駒場だ。
駒場慎一(こまば・しんいち)東京理科大学 理学部応用化学科教授。1970年東京都豊島区生まれ,埼玉県出身。98年早稲田大大学院理工学研究科博士後期課程修了,岩手大学工学部助手。2003~ 04 年文科省在外研究員として仏ボルドー第1大学付設CNRSボルドー固体化学研究所博士研究員。05年東京理科大学理学部講師,同准教授を経て13年より現職。