日経サイエンス  2014年9月号

遺伝子治療 再登板

R. ルイス(サイエンスライター)

薬ではとても治せない先天性の難病も根治可能な遺伝子治療は1990年代に大きな期待を集めたが,いくつかの臨床試験で副作用による死亡例が出るという悲劇が起こった。これは大きなブレーキになったが,基礎研究に立ち戻って原因を究明した結果,治療用遺伝子を患部に運び入れる優れたベクターが開発された。過剰な免疫反応を起こさず,がんを誘発することもないウイルスを使う。近年の臨床試験では視覚障害や白血病の治療で目覚ましい効果が出ている。ヨーロッパは2012年に初の遺伝子治療を承認し,米国でも2016年までには認可が下りる見通しだ。遺伝子治療は失われた10年の後,ついに革命的治療法としての使命を果たし始めた。

 

 

【関連動画】肝臓の遺伝子治療

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Ricki Lewis

遺伝学のPh.D.を持つサイエンスライター。教科書を数冊と多くの雑誌記事を執筆してきた。著書に「Forever Fix:Gene Therapy and the Boy Who Saved It」(St.Martin’s Press, 2012年)がある。

原題名

Gene Therapy’s Second Act(SCIENTIFIC AMERICAN March 2014)

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