日経サイエンス  2014年8月号

蜂蜜がとぐろを巻く謎

N. M. リベ(仏FAST研究所) M. ハビビ(蘭アムステルダム大学) D. ボン(蘭アムステルダム大学)

 蜂蜜などの粘性流体を何かの表面に垂らすと,螺旋状にコイルを巻いて,小さな編み籠のような形ができる。誰もが見たことのある造形だが,このプロセスが物理的に詳しく調べられるようになったのは近年のことで,予想外に複雑な現象であることがわかった。下に向かう流れの自重と慣性,内部摩擦力のバランスに応じて,4種類のコイリングが起こりうる。より粘性の小さな流体では,折り返しなどさらに別タイプの挙動も生じる。また,次々に生じた気泡が螺旋パターンを描く奇妙な現象が見られる。動いている表面に流体を垂らした場合に生じる特殊なパターンとともに,完全には説明できていない。

著者

Neil M. Ribe / Mehdi Habibi / Daniel Bonn

リベは流体力学と地球の内部構造を専門とする物理学者で,仏オルセーにあるFAST研究所〔フランス国立科学研究センター(CNRS)傘下の熱流体システム研究所〕の所長。科学史(特に光学と色彩理論)や音楽(ピアノと歌唱)にも興味を持っている。

ハビビはイランのザンジャーンにある基礎科学高等研究所の教授を経て,現在は蘭アムステルダム大学物理学科の客員研究員。余暇に水泳と山登りを楽しんでいる。

ボンは流体力学を研究する実験物理学者で,アムステルダム大学の教授。この記事で述べられている研究の一部は,仏高等師範学校(パリ)のCNRS研究員を務めていた間に行われた。当時もアムステルダム大学の教授を兼任。趣味はヨット。

原題名

The Liquid Rope Trick(SCIENTIFIC AMERICAN February 2014)

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