日経サイエンス  2014年6月号

ヒトが長寿になったわけ

H. プリングル(サイエンスライター)

 チンパンジーの一生は約13年なのに対し,日本人の平均寿命は82年を超える。ヒトが長生きなのは,近代的な医療や食料の安定供給,上下水道の整備のおかげだとされてきた。だが,それだけはなさそうだ。現代の狩猟採集民は衛生状態の良くない自然環境で暮らしているが,チンパンジーよりもはるかに長生きする。近年の研究から新しい仮説が生まれた。長寿化の傾向はずっと昔に始まっており,太古の環境中に存在した病原体と闘うために強力な免疫機構を進化させたことが長寿につながったという見方だ。例えば人類の祖先が肉を多く食べるようになると,それに付随する病原体に対する防御機構が進化したという。

 

 

再録:別冊日経サイエンス225「人体の不思議」
再録:別冊日経サイエンス219 「人類への道 知と社会性の進化」

著者

Hether Pringle

カナダのサイエンスライター。 Science 誌の寄稿記者。

原題名

Long Live the Humans(SCIENTIFIC AMERICAN October 2013)

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