
深海探査は日本が世界をリードしてきた分野だが,近年は米国なども意欲的だ。近く米国の無人潜水艇「ネーレウス」がニュージーランド沖のケルマデック海溝(深さ1万m)を探査する。ビデオ撮影からサンプル採取まで,現在のところ最も多彩な探査機能を備えたハイテク機だ。奇妙な新生物の発見などが期待されるが,深海探査の意義はもっと広い。巨大な水圧を生物がどう生き延びているのか,生命誕生の場は海溝の底だったのか,巨大地震や津波を起こすメカニズムは何かなど,重要なテーマが目白押しだ。深海生物に見つかった化合物にはタンパク質の構造を安定化するものがあり,アルツハイマー病の治療薬につながると期待する研究者もいる。未探査の超深海は地球に残る大きなフロンティアだ。
※続報
ネーレウスは2014年5月10日ケルマディック海溝潜水中に行方不明に
To Hades and Back: Nereus Lost | Expeditions, Scientific American Blog Network
著者
Mark Schrope
フロリダ州を本拠に活動するフリーランスライター・編集者で,1年のうち7カ月以上を海洋学調査船に乗って海上で過ごしている。シュミット海洋研究所の広報顧問も務めている。
原題名
Journey to the Bottom of the Sea(SCIENTIFIC AMERICAN April 2014)
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ネーレウス/ケルマデック海溝/超深海/トリエステ号/かいこう/しんかい6500/ちきゅう/蛇紋岩化作用