日経サイエンス  2014年5月号

新興真菌症の恐怖

J. フレーザー(サイエンスライター)

 最初はイヌやネコの呼吸異常だった。やがて肺が真菌で一杯になったネズミイルカが海岸に打ち上げられ,謎の呼吸器疾患を発症する人が増え始めた──2001年,カナダのバンクーバー島を襲った未知の病気は,深刻な懸念を引き起こした。新たなタイプの真菌「クリプトコックス・ガッティ」がもたらした新興感染症だ。

 2012年までにブリティッシュコロンビア州で300人以上が感染し,北米大陸を南下中。患者の25%〜30%が死亡した。地球温暖化と宅地開発の進展で,どこかの片隅にいた微生物が解き放たれたのかもしれない。日本でも流行地に渡航したことがない患者3人からこの真菌が見つかっており,研究者らは警戒を強めている。

 

 

関連記事:真菌が私たちの免疫系から逃れる仕組みについて(英語)

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Jennifer Frazer

フリーのサイエンスライターでSCIENTIFIC AMERICAN のBlog Networkで「The Artful Ameba」を執筆しているほか,Nature誌やGrist誌,High Country News紙に寄稿している。米科学振興協会科学報道賞を受賞。

原題名

Fungi on the March(SCIENTIFIC AMERICAN December 2013)

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