日経サイエンス  2014年4月号

失明治療で見えてきたこと

P. シンハ(マサチューセッツ工科大学)

網膜に映っているのは,様々な色や明るさをした雑多なパターンだ。これがどのようにして意味のあるまとまりとして統合され,例えばコーヒーカップや人の顔として認識されるのか? 神経科学でも最も難しい疑問の1つだ。脳は見ることをどのように学習するのか,また幼いころにそうした学習経験をしないと視覚が発達しないままになるのか? インド出身の神経科学者である著者は,白内障などで視力を失った母国の子供たちを治療するプロジェクトを通じて,この謎に迫った。開眼手術直後には目にしたものをうまく解釈できなくても,脳が「見方」を学習してきちんと見えるようになる。視覚と別の感覚を結びつける能力も身に付くようだ。

再録:別冊日経サイエンス255『新版 意識と感覚の脳科学』

著者

Pawan Sinha

マサチューセッツ工科大学の視覚と計算神経科学の教授で,脳が物体や景色を認識するメカニズムや原理について研究している。

原題名

Once Blind and Now They See(SCIENTIFIC AMERICAN July 2013)

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