
他者とのコミュニケーション能力に欠けるなどの特徴がある自閉症。子どもが自閉症と診断される親は,米国で毎年何千人にものぼっている。自閉症のメカニ ズムは未だ不明で,完治させる手段は見つかっていないものの,長期的な効果が見込める新たな治療法が登場し,この病気への新しいアプローチが確立しつつあ る。最も重要なのは,自閉症であることを早期に発見すること。そして,認知行動療法といわれる社会性を高めるための治療を施すことが有効だ。治療効果をさ らに高める薬物として,脳ホルモンであるオキシトシンが有望とみられており,米国ではオキシトシンを経鼻投与する臨床試験が始まっている。
再録:別冊日経サイエンス218 「脳科学のダイナミズム 睡眠 学習 空間認識 医学」
著者
Nicholas Lange / Christopher J. McDougle
ランジ(左)は精神医学と生物統計学の准教授で,ハーバード大学 医学部と同大学マクリーン病院の神経統計学研究所所長。マクドゥー グル(右)はマサチューセッツ総合病院小児科にある集学的治療施設, ルーリー自閉症センターの所長。