日経サイエンス  2014年3月号

血液脳関門をこじ開ける

J. インターランディ(科学ジャーナリスト)

 「血液脳関門」と聞くと,まるで壁のような関所が脳の入口にあるかのようなイメージを持つ人がいるかもしれない。だがそうではない。実際のところ,脳関門は極めて複雑な活動をしている。脳の血管の内壁を覆う血管内皮細胞から成り,周辺にある細胞と情報交換をしながら,特定の物質だけを通してほかをブロックしている。最近の研究から,この脳関門が多様な疾患に関係していることがわかってきた。多発性硬化症やてんかん,アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患まで,脳関門の異常が発症に関係している可能性が浮上している。また脳関門を人工的にこじ開け,脳腫瘍に抗がん剤を届ける試みも始まっている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Jeneen Interlandi

ニューヨークを拠点とするフリーの科学ジャーナリスト。2012年にはハーバード大学のニーマン・フェローとして,科学と医学の歴史について研究した。

原題名

Breaking the Brain Barrier(SCIENTIFIC AMERICAN June 2013)

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