
「結核の恐さ」と聞くとサナトリウム文学とともに,歴史の1コマだと思う人もいるかもしれない。だが今,かつてないほど急速に発症し,伝播しやすく,症状が重く,標準治療が効かない新しい結核菌が広がりつつある。「北京型」と呼ばれるもので,サンフランシスコやニューヨークにアウトブレイクを引き起こした。こうした新興の結核菌は,これまでの治療の裏をかく。おとなしいタイプの菌が従来の治療で一掃されると,北京型が増殖しやすくなる。また結核菌の中には宿主の免疫を活性化することで発病を促すものもあり,ワクチン開発に暗雲を投げかけている。これを抑え込むには住環境の改善など,社会的な対策も必要だ。
スライドショー:Tuberculosis Waits Patiently for Its Comeback
著者
Sally Lehrman
医学・科学政策を専門とするジャーナリスト。医療格差に関する本「Skin Deep: The Search for Race in Our Genes」が,オックスフォード大学出版から出版される予定だ。
原題名
The Diabolical Genius of an Ancient Scourge(SCIENTIFIC AMERICAN July 2013)