日経サイエンス  2014年1月号

海の生物を脅かす陸の病原体

C. ソロモン(ジャーナリスト)

 人間や飼い猫など陸の動物から病原菌や寄生虫が海に流入して,海生動物を脅かしている。ネコの寄生虫がイルカを殺し,有袋類のオポッサムに感染する寄生生物がカリフォルニアラッコの命を奪うなどの事例が全世界から報告されるようになった。以前のデータがないので比較できないものの,こうした「ポリュータジェン(汚染病原体)」は増えていると思われる。さらに,人間が排出した薬剤耐性菌がサメやアザラシで検出されており,これらの菌が変異して再び人間に感染する懸念もある。下水の浄化処理を徹底し,陸と海の間で自然の浄化フィルターとして働いている湿地を広げることで,ポリュータジェンの脅威を緩和できるだろう。

 

 

再録:別冊日経サイエンス221「微生物の脅威」

著者

Christopher Solomon

Seattle Times紙の元記者で,環境と野外生活についてNew York Times紙や Outside誌などに記事を執筆している。

原題名

How Kitty Is Killing the Dolphins(SCIENTIFIC AMERICAN May 2013)

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