日経サイエンス  2014年1月号

認知症のタネをまくタンパク質

L. C. ウォーカー(ヤーキス米国立霊長類研究センター) M. ジャッカー(独テュービンゲン大学)

 タンパク質は組成が同じでも,その形状が異なるものがある。狂牛病などの感染症は,異常な形をしたプリオンタンパク質が,正常なプリオンタンパク質を異常な形に変えることによって起こる。ノーベル賞の対象となった発見だ。これと同様のプロセスが,アルツハイマー病やパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった主要な神経変性疾患でも起こっているようだ(ただし,これらの疾患がヒトからヒトに感染することはない)。タンパク質がいかにしてねじれ,正常なタンパク質を異常な形に変えるようになるかを理解することは,世界の主要な神経変性疾患の予防法や治療法の開発につながるだろう。

 

【スライドショー】毒性タンパク質の生成プロセス

 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

著者

Lary C. Walker / Mathias Jucker

 ウォーカーはヤーキス米国立霊長類研究センターの研究教授で,エモリー大学の神経学准教授を兼任。ジャッカーはドイツにあるテュービンゲン大学ヘルティ臨床脳研究所およびドイツ神経変性疾患研究所の研究教授。2人は過去20年間,脳の老化やアルツハイマー病の研究を共同で行ってきた。

原題名

Seeds of Dementia(SCIENTIFIC AMERICAN May 2013)

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