日経サイエンス  2013年12月号

特集:食欲

味な感覚

プロローグ

M. モイヤー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

味覚は一般的に考えられているものとは違う。味覚は五感の1つで,嗅覚や視覚,触覚の仲間だと学校で習った。味蕾(舌の表面にある味覚細胞)が食べ物に触れると,それが甘いか苦いか,栄養物か毒物かを知らせるシグナルを脳に送る結果生じる感覚だと。だが,実際はそんなに単純ではない。

 

ここ10年で,味覚と味に関する知識は爆発的に増えた。例えば,食物は私たちの意識を変容させること,先入観によって味の感覚にフィルターがかかることがわかってきた。さらに,そうしたことが様々な複雑な仕組みで起こることも知られるようになった。おいしさの感覚は生得的な面があるが,学んで身に付ける面もある。また属人的であると同時に普遍性も持っている。おいしさは,聴覚をも含めた五感のシグナルが,私たちが脳と呼ぶ神経組織の塊に集まり,そこで予期せぬ相互作用をすることによって生じる感覚だ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス205「食の探究」

著者

Michael Moyer

原題名

The Food Issue(SCIENTIFIC AMERICAN September 2013)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

味蕾舌乳頭味覚レトロネイザル嗅覚風味