日経サイエンス  2013年11月号

特集:眠りと夢の脳科学

夢が教える発想

D. バレット(ハーバード大学)

科学者や芸術家が夢の中から発見のヒントや制作のアイデアを得たという話が数多くある。ベートーベンやポール・マッカートニーは、目覚めた時に新しい楽曲が湧いて出たという。数学者が見た夢に同僚の研究者が現れて,問題の解法を教えてくれたという逸話もある。

睡眠中に我々が見る夢の役割を巡っては,かねて様々な解釈がされてきた。心に引っかかっている心配事や願望が夢となって現れるというのが代表的な見方だが、それだけでなく,夢には人に普段は思いつかないようなインスピレーションを与えたり,抱えている課題をシミュレーションして問題解決に導いたり,といった効用があるようだ。

それが可能になるのは,睡眠時に脳の状態が変化するためだ。人間の思考に制約をかけている脳の領域の活動が,睡眠時には弱まっており,これが昼間には思いつかないような発想につながるらしい。



再録:別冊日経サイエンス255『新版 意識と感覚の脳科学』

著者

Deirdre Barrett

ハーバード大学医学部に所属する心理学者。著書に「The Committee of Sleep 」(Oneiroi,2010 年)がある。

原題名

Answers in Your Dreams(SCIENTIFIC AMERICAN MIND November/December 2011)

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