日経サイエンス  2013年10月号

死を悼む動物たち

B. J. キング(ウィリアム・アンド・メアリー大学)

 動物は仲間の死を悲しむのだろうか? 野生のヒヒやチンパンジーの母親は我が子の遺骸を数カ月にわたって抱えて持ち歩くことがある。表面的には死を深く悲しんでいるように見えるものの,ほかには動揺や苦悩を思わせる特徴を何も示さないので,悲嘆とは少し違うようだ。だが一方では,イルカやゾウ,キリン,飼い猫,カモなど,野生あるいは飼育下にある様々な動物が「仲間の死を悼んでいる」としか思えない行動を示す例が数多く報告されるようになった。動物の「感情」を客観的に調べるのは難しいが,自然人類学者である著者は「他者の死を深く悲しむという人間の能力を,他の動物たちも部分的に共有している」とみる。

 

 
再録:別冊日経サイエンス206「生きもの 驚異の世界」
再録:別冊日経サイエンス209「犬と猫のサイエンス」

著者

Barbara J. King

ウィリアム・アンド・メアリー大学の人類学の教授。サルと類人猿の研究をきっかけに,様々な動物種の感情と知性を調べるようになった。

原題名

When Animals Mourn(SCIENTIFIC AMERICAN July 2013)

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