日経サイエンス  2013年10月号

塩水が刻む火星の地形

A. S. マキューエン(アリゾナ大学)

 新しい探査機が火星に行くたびに「水を発見」というニュースが報じられるが,それらは遠い昔に水があった,あるいは現在の火星に氷や水蒸気などが存在するという意味で,液体の水が地表を流れているのが確認されたわけではない。一方,火星に流水痕のように見える地形が季節的に出現するのも事実だ。しかし,そんな地形を生み出すほど大量の水が,空気が薄い極寒の火星でどうして存在できるのか? この記事の著者マキューエンは近年の探査データに基づき,非常に興味深い仮説を打ち出した。火星に豊富に存在する硫酸鉄などの塩(えん)が大気中の水分を吸収して濃い塩水となり,“凍らない水”を生み出している可能性が高いという。

 

 

再録:別冊日経サイエンス223「地球外生命探査」

 

著者

Alfred S. McEwen

アリゾナ大学の惑星科学教授。HiRISEの研究責任者を務め,土星や月の探査ミッションにも携わっている。

原題名

Mars in Motion(SCIENTIFIC AMERICAN May 2013)

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