
米国では警察による犯罪捜査にともなうDNA採取の対象が拡大しており,これが市民の自由を脅かす恐れが強まっている。DNAは指紋とは異なり,本人かどうかを判定するだけでなく,類似のDNA配列を持つ人物にも捜査の網をかけることができる。
DNAの照合ミスの可能性が常にある以上,被疑者の家族や親類など犯罪に関係のない人へのプライバシーへの脅威が強まることになる。多くの州で逮捕者すべてに対してDNAサンプル採取を義務付ける動きがあり,多数の無実の人々のDNA情報が警察のデータベースに記録されることになる。DNAデータベースが乱用される危険を防ぐための法的措置が必要だ。
著者
Erin Murphy
ニューヨーク大学法学部教授。犯罪捜査におけるDNA利用に関する専門家。刑事司法制度におけるテクノロジーとプライバシーに研究の的を絞り,路上犯罪に特に重点を置いている。
原題名
The Government Wants Your DNA(SCIENTIFIC AMERICAN March 2013)