日経サイエンス  2013年9月号

特集:未来へのタイムトラベル

50,100,150年後の世界

M. カミングズ(マサチューセッツ工科大学) R. ローゼンバウム(ジャーナリスト) R. ルイス(ジャーナリスト) T. ラブジョイ(ジョージ・メイソン大学) D. W. キース(ハーバード大学) A. パーカー(ハーバード大学) E. レジス(サイエンスライター)

 今から50年,100年,150年後の科学技術はどうなっているだろうか?SCIENTIFIC AMERICANには50年,100年,150年前の本誌に何が書かれていたかを紹介する「サイエンス考古学」が毎号載っている。これが可能なのは,本誌が最先端の科学と技術を167年以上にわたって読者に紹介してきたからにほかならない。例えば1962年10月号ではDNAの構造の発見者の1人クリック(Francis Crick)がこの素晴らしい分子の重要性を説明し,心理学者のフェスティンガー(Leon Festinger)が「認知的不協和」とは何かについて書いている。

 

 過去は未来を予測する上でよいよりどころになる。そうした考えから,この記事では,これまでに本誌に寄稿してくれた人々に今から50年,100年,150年後の世界がどうなっているか想像力を膨らませてもらった。車は空を飛んでいるか? コンピューターはまだ存在しているか,存在しているとしたらどのようなものになっているか? 核兵器は廃絶されているか? 技術の進歩によって気候変動は食い止められているか,それとも状況は悪化しているか? ますます混み合う地球で,トラなどの野生動物の運命は? 病気にならないための遺伝子改変技術はどれほど進んでいるか? 人類が地球を旅立っているとしたら,その旅は人間をどう変えているか?

 

 そうした疑問に対する答えを紹介していく。いや,正確に言えば答えではない。私たちは未来はこうだと予測するつもりはない。むしろ,現在の世界を理解し,次に何が起こるかについて考えを巡らすために,科学的事実に基づいた思考実験をしたいと思う。

 

一家に一台,飛ぶ車  M. カミングズ

苦い経験を経て核ゼロへ  R. ローゼンバウム

遺伝子治療が医療を革新  R. ルイス

迫り来る“絶滅の津波”  T. ラブジョイ

改造された地球の運命  D. W. キース/A. パーカー

コンピューターの未来を予測する大胆かつ愚かな試み  E. レジス

 
 
再録:別冊日経サイエンス231「アントロポセン──人類の未来」
 
 

動画:空飛ぶ車候補?PAL-V ONE

著者
Mary "Missy" Cummings
カミングズはマサチューセッツ工科大学の航空宇宙工学准教授。同大学ヒューマン・アンド・オートメーション研究所の所長も務める。
Ron Rosenbaum
ローゼンバウムは米国のジャーナリストで作家。7冊の著書がある。近著は「How the End Begins: The Road to a Nuclear World War III」(Simon and Schuster,2011年)。
Ricki Lewis
ルイスは遺伝学の博士号を持つ作家。近著は「The Forever Fix: Gene Therapy and the Boy Who Saved It」(St. Martin’s Press,2012年)。遺伝学の教科書も何冊か執筆している。
Thomas Lovejoy
ラブジョイは「生物多様性(biological diversity)」という言葉の生みの親。保全生物学の発展に大きく貢献してきた。熱帯雨林への脅威を警告する中心人物でもある。
David W. Keith/Andy Parker
キースはハーバード大学教授で,パーカーはキースの研究室の研究者。ともに地球温暖化に対処するために地球の気候を変化させる大規模な工学プロジェクトに関する公共政策を研究している。
Ed Regis
レジスはサイエンスライター。8冊の著書がある。近著チャーチ(George M. Church)との共著「Regenesis: How Synthetic Biology Will Reinvent Nature and Ourselves」(Basic Books,2012年)

原題名

The Future in 50, 100 and 150 Years(SCIENTIFIC AMERICAN January 2013)

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