
孤児院の養育環境は愛情に欠けている例が多いとされ,施設養育が実の親や里親による世話に遠く及ばないことを示す調査研究が1960年代からいくつかあった。しかし,そもそも里子に選ばれた子供は問題が少なく,問題の多い子が施設に残されたのかもしれない。こうしたバイアスを除外して調べるには,遺棄児童を施設と里親家庭に無作為に振り分ける必要がある。そんな実験的研究は不可能に思えたが,ある特殊な事情がそれを可能にした。独裁者チャウシェスクの誤った人口増加政策によって生まれたルーマニアの孤児たちだ。前例のない厳密な比較対照研究から,施設養育が子供たちに強いた犠牲と,そうした傷を癒す道が明らかになった。
著者
Charles A. Nelson / Nathan A. Fox / Charles H. Zeanah, Jr.
ネルソンはハーバード大学医学部で小児科学・神経科学と精神医学心理学の教授を務めている。ルーマニアのブカレスト大学から名誉博士号を贈られている。フォックスはメリーランド大学カレッジパーク校の人間発達・定量方法論学科の特別教授。ジーナはテュレーン大学の精神医学の教授で小児科医。同大学の乳幼児期精神衛生研究所の所長を務めている。
原題名
Anguish of the Abandoned Child(SCIENTIFIC AMERICAN April 2013)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
チャウシェスク/欠陥学/ブカレスト初期養育プロジェクト/不安障害/注意欠陥・多動性障害