日経サイエンス  2013年8月号

尾を取り戻したイルカ

E. アンテス(科学ジャーナリスト)

 フロリダ半島西岸,クリアウォーター海洋水族館にいるイルカの「ウィンター」はちょっとしたセレブだ。漁網に絡まって苦しんでいるのを救われたものの尾を失ったウィンターに人工装具の専門家たちが新しい尾を作ってやり,すっかり元気になった。この心温まる物語は映画になり,多くのウィンター関連グッズが発売されるほどの人気だが,それだけではない。人工の尾を開発するなかで滑りやすいイルカの肌に密着する新素材が生まれ,汗をかいても外れにくい義手や義足につながった。熟練の運動選手から11歳の少女まで多くの身障者が利用している。開発にあたった専門家は「動物を助けると多くのお返しをしてくれる」と語っている。

 

アニマルプロテーゼの成功例【動画】

著者

Emily Anthes

ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するジャーナリストで,Wired誌やDiscover誌,Slate誌などに執筆している。マサチューセッツ工科大学からサイエンス・ライティングの修士号を,エール大学から科学史・医学史の学士号を得た。

原題名

A Dolphin’s Tale(SCIENTIFIC AMERICAN March 2013)

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