日経サイエンス  2013年8月号

創造する人類

H. プリングル(サイエンスライター)

人類が発明や芸術などの創造性を獲得した時期は,4万年前の後期旧石器時代の初頭であると従来考えられてきた。ヨーロッパにいたホモ・サピエンスが様々な石器や骨角器を作り始め,洞窟の壁に動物の絵を描いていたころだ。しかしこの10年ほど,はるかに古い考古学的証拠が見つかり,人類の創造性の起源は,ホモ・サピエンスが出現した20万年前よりもさらにさかのぼることがわかってきた。

知能はある時期に遺伝子の突然変異が起きたことによって一気に飛躍したわけではなく,脳の発達など生物学的要素と社会的要素が複雑に作用することによって,数十万年をかけて徐々に高められてきたらしい。特に一定以上の人口密度と社会的ネットワークが人類の創造性を刺激してきたようだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス194「化石とゲノムで探る 人類の起源と拡散」

著者

Heather Pringle

カナダのサイエンスライター。Archaeology 誌の寄稿編集者。

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原題名

The Origins of Creativity(SCIENTIFIC AMERICAN March 2013)

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