日経サイエンス  2013年8月号

特集:ニュートリノ物理学

ヒッグス粒子に続く物理学の革新

 万物に質量を与えるヒッグス粒子が2012年に発見され,その質量もわかった。これによって素粒子物理学の基本的枠組み「標準モデル」において,存在が予測された素粒子が全部そろった。しかしその中には,いまだに素性がよくわかっていない粒子がある。「ニュートリノ」だ。ニュートリノは物質を構成する粒子の1つでありながら,物質の中を幽霊のように素通りし,その質量はゼロとされていた。ところが1990年代末,質量の存在が発見された。ただ質量は極端に小さく,いまだその値は求まっていない。しかもその質量は標準モデルのヒッグス粒子だけでは説明がつかないようなのだ。日常の物質を構成する電子や陽子などと比べ,私たちには縁遠い存在のように思えるニュートリノ。しかし実は,このニュートリノが,現在の宇宙が空っぽではなく星や銀河が存在する豊かな世界になっている根本にあるとする説が有力視されている。母なるニュートリノ──東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長は,こんな言葉でニュートリノを表現する。本特集「ニュートリノ物理学」では加速器や原子炉,地下深くの実験施設,人工衛星などを用いて明らかになってきたニュートリノの素顔を3本の記事で紹介する。わかったことも多い一方,新たな謎も浮かび上がった。

 

 

ニュートリノで探る物質の起源  M. ヒルシュ/H. ペズ/W. ポロド

 

CPの破れとマヨラナ   中島林彦 協力:川崎雅裕/横山将志(ともに東京大学)


宇宙の歴史を見る  中島林彦

 

 

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