
個人の遺伝情報を病気の予防や診断に役立てる時代が始まりつつある
タンパク質を作らない” 無意味” な配列の隠れた意味をつきとめ
遺伝情報の臨床応用を牽引する
遺伝情報が人間の体の中で実際にどう働き,がんなどの発生や転移とどのように関連するのか。1990年代から積み上げてきた解析の成果が,「病気の診断や予防に役立てられるところまできた」と林崎良英は実感している。理化学研究所が今年4月に新設した「予防医療・診断技術開発プログラム」の初代プログラムディレクターに就任。埼玉県の和光事業所と横浜事業所の間を往復するほか,2012年4月に臨床データの利用などを含む協定を結んだ順天堂大学の病院に出向き,医師と議論する時間も増えた。 (文中敬称略)
林崎良英(はやしざき・よしひで) 理化学研究所 予防医療・診断技術開発プログラムディレクター。1957年大阪市生まれ。82年大阪大学医学部卒,86年同大学院博士課程修了,医学博士。92年理化学研究所研究員。同ゲノム機能解析研究グループプロジェクトリーダー,ゲノム科学総合研究センター遺伝子構造・機能研究グループプロジェクトディレクターを経て08年オミックス基盤研究領域長。2003 ~ 10年スウェーデン・カロリンスカ研究所客員教授兼務。紫綬褒章,日本遺伝学会木原賞,持田記念学術賞,カロリンスカ研究所名誉医学博士賞など受賞。