日経サイエンス  2013年7月号

海流と気候 メキシコ湾流再考

S. C. ライザー(ワシントン大学) M. S. ロージア(デューク大学)

 英国が北海道とほぼ同緯度にあるなど,ヨーロッパは高緯度に位置するが,その割には冬も比較的暖かい。これはヨーロッパの横を流れるメキシコ湾流が低緯度地方から熱を運んで来るためだと言われてきた。しかし,学校でも長年教えられてきたこの説はどうやら誤りのようだ。海流だけでなく,大規模な気圧配置などが影響しているらしい。またメキシコ湾流については,地球温暖化が進んで北極の氷が大量に解けることに伴って停止してしまい,ヨーロッパが寒冷化することが近年懸念されている。しかし,このシナリオも現実的ではないことが明らかになってきた。メキシコ湾流に関する通説を洗い直してみる。

 

 

再録:別冊日経サイエンス197「激変する気候」

著者

Stephen C. Riser / M. Susan Lozier

ライザー(左)はワシントン大学(シアトル)の海洋学教授。アルゴ計画の米コンソーシアムと国際運営チームのメンバーを長年務めている。ロージア(右)はデューク大学ニコラス環境スクールの教授(海洋物理学)で,米国子午面循環科学チームの一員。

原題名

Rethinking the Gulf Stream(SCIENTIFIC AMERICAN February 2013)

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