日経サイエンス  2013年6月号

人類の起源 崩れる祖先像

K. ハーモン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 こぶしをついて四足歩行していたサルがしだいに背中を伸ばして立ち上がり,二本足で真っ直ぐ立って歩くヒトになっていく──人類進化の解説書にはそんなイメージ図がよく載っている。「進化の行進図」と呼ばれるものだが,このとらえ方はどうも単純すぎるようだ。人類の進化が一本道ではなかったことを示す化石記録が近年いくつも発見された。440万年前のラミダス猿人が代表例で,樹上を移動するのに適した類人猿のような特徴と,二足歩行に向いた足の構造を併せ持っている。また,同様の混在を示す別の化石人類は直立歩行する猿人と同時代に共存していたらしい。人類がたどった進化の道は複数あったようで,私たち現生人類の祖先を突き止めるルートも交錯しているようだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス194「化石とゲノムで探る 人類の起源と拡散」

原題名

Shattered Ancestry(SCIENTIFIC AMERICAN February 2013)

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