日経サイエンス  2013年6月号

連続な量子

D. トン(英ケンブリッジ大学)

 「神は整数をお作りになった。残りはすべて人間の仕業だ」。こう言ったのはドイツ人数学者クロネッカーだ。この言葉は,物理の世界ではこんな風に聞こえるだろう。自然は本質的に不連続であって,ひとつひとつ数えられる要素でできている。世界は不連続な情報のビットで表され,物理法則というアルゴリズムで動く巨大なコンピューターのようなものだ──。現在の物理学の主流といえる考え方だが,「本当にそうだろうか?」と,理論物理学者トンは問いかける。むしろ世界は本当は連続的で,それを理論で記述する過程によって不連続性が立ち現れるのではないか。既知の物理法則はコンピューターでシミュレーションできないという特徴があるのだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス229「量子宇宙 ホーキングから最新理論まで」

著者

David Tong

英ケンブリッジ大学の理論物理学教授。これまでボストンやニューヨーク,ロンドン,ムンバイで研究職に就いてきた。量子場の理論やひも理論,ソリトン,宇宙論を中心に研究している。

原題名

The Unquantum Quantum(SCIENTIFIC AMERICAN December 2012)

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