日経サイエンス  2013年6月号

覆る活性酸素悪玉説

M. ウェンナー=モイヤー(サイエンスライター)

 「活性酸素は老化の原因」「抗酸化サプリでアンチエイジング」──こんなうたい文句を聞いたことのある人は多いだろう。フリーラジカルなどの活性酸素によって細胞が傷害を受け,その蓄積のために老化するという説は,1950年代に登場し,老化メカニズムの“定説”になった。だが最近の研究によると,それほど単純な話ではないようだ。マウスに抗酸化物質を食べさせると寿命が延びるとした初期の実験は再現できず,遺伝子操作でフリーラジカルを多く作らせた線虫はむしろ長生きした。抗酸化剤を飲んでいる人が長生きするとの証拠も見つかっていない。どうやらフリーラジカルは単なる「悪玉」ではなく,細胞修復を促す役目もあるようだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス204「先端医療の挑戦 再生医療,感染症,がん,創薬研究」

 

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著者

Melinda Wenner Moyer

 ニューヨーク州ブルックリン在住のサイエンスライター。本誌にもしばしば寄稿している。ニューヨーク市立大学大学院のジャーナリズムコースの非常勤の助教を務めている。

原題名

The Myth of Antioxidants(SCIENTIFIC AMERICAN February 2013)

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