日経サイエンス  2013年6月号

特集:天才脳の秘密

 天才と呼ばれる人の脳は,普通の人とは違っているのか? 脳の使い方が違うから常人にはまねのできない閃きや,けた外れに高い知性が生みだされるのか? 創造性の源泉について長く研究してきた心理学者や脳科学者が最近注目しているのが,天才と変人の関係だ。たぐいまれな才能を発揮する芸術家や科学者は,しばしば奇妙な行動をとる。脳に流れ込んでくる膨大な情報を人は無意識のうちにフィルターにかけて選別しているが,このフィルター機能が弱い人がいる。こうした歯止めのなさによって意識上にあふれてくる膨大な情報を処理できる人が,創造的な活動を生み出すが,これが同時に奇妙な行動につながったりすることも多いらしい。

 

 天才が独創的なアイデアに到達したり,芸術作品を生み出したりするまでのプロセスをたどると,ある瞬間突然に「正解」に達するのではなく,膨大な規模での試行錯誤を繰り返していることが多いことがわかる。天才はそのような,普通の人には気のめいるような繰り返し作業をさほど苦も無くやってのける人々であるようだ。

 

 特定の領域で天才的な能力を発揮するのがサヴァン症候群の人々だ。複雑な風景を一瞬見ただけで,写真を撮るように忠実に再現して描けるといった特異な認知能力が,突然に出現することもあるが,このことは,誰もがそのような潜在的な能力を持っているのに引き出せずにいる可能性を示している。

 

 

天才と変人 解き放たれた知性  S. カーソン

創造性の起源  D. K. シモントン

これが天才だ!  SCIENTIFIC AMERICAN MIND 編集部

天才たちの系譜  L. フリードマン

既成概念をオフ サヴァンに学ぶ独創のヒント  A. W. スナイダー S. エルウッド R. P. チー

 

 

再録:別冊日経サイエンス201「意識と感覚の脳科学」

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