
食物網には,外力を和らげ安定を維持する自己回復力が備わっているが,限界を超えると一気に変化する。オオカミを駆除したイエローストーン国立公園ではヘラジカなどが増加し,幼木の葉が食べられて大量に枯死した。サメを乱獲した米国東海岸の沖合ではウシバナトビエイなどが増え,カキやホタテガイが激減した。食物網は多くの種が絡み合った複雑なネットワークだが,優れた数理モデルの開発とコンピューターの能力向上のおかげで,こうした変化を事前に予測することが可能になってきた。臨界点を超える前に変化を察知し,必要な手を打つことが可能になるかもしれない。
著者
Carl Zimmer
ニューヨーク・タイムズ紙に頻繁に寄稿しているサイエンスライター。著書は共著を含め10冊以上にのぼる。近著の「Evolution: Making Sense of Life」は生物 学者エムレン(Douglas J. Emlen)との共著だ。
原題名
Ecosystems on the Brink(SCIENTIFIC AMERICAN October 2012)