日経サイエンス  2013年4月号

ファージの力

語り:V. フィシェッティ(ロックフェラー大学) 聞き手:B. ボレル(サイエンスライター)

 人体に感染した細菌を殺す驚きの新手法の臨床試験を米バイオベンチャーが準備中だ。「ワクワクしているよ。ここまで来るのに10年,懸命に働いてきたから」と開発者の米ロックフェラー大学のフィシェッティ博士は話す。抗生物質の長年の使用で耐性菌が登場,様々な感染症の治療が難しくなっている。抗生物質のほとんどは土壌中の細菌や真菌が作り出す化学物質がもとになっているが,博士が注目したのは細菌に感染してその内部機構を乗っ取るウイルス「バクテリオファージ」。細菌中で増殖したファージは「溶菌酵素」を作り出して細菌を破壊する。この溶菌酵素を使えば,耐性菌による感染症も治療できる可能性がある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス221「微生物の脅威」

著者

Vincent Fischetti / Brendan Borrell

フィシェッティはロックフェラー大学の微生物学者。

ボレルはニューヨークを拠点とするサイエンスライターで,SCIENTIFIC AMERICANNature誌などに頻繁に執筆している。

原題名

Phage Factor(SCIENTIFIC AMERICAN August 2012)

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