
恐竜をクローン技術で蘇らせるのは映画『ジュラシック・パーク』の中だけの話。一方,化石ではなくミイラ化した死骸が見つかっているマンモスについてはクローンができるのではないかと専門家が検討したが,現時点では無理とわかった。では,そうした試みはまったくの徒労なのかというと,そうではない。試験管実験で,マンモスの体内で起きていた生理現象を一部再現できるようになったのだ。著者らは,マンモスの血液中にあったのと同じ形態と機能を持つヘモグロビンを作り出し,その働きを調べることで,マンモスが寒冷環境に耐える秘密の一端を明らかにした。古代DNAを用いて絶滅動物の生理過程を探る「古生理学」の誕生だ。
著者
Kevin L. Campbell / Michael Hofreiter
キャンベルはカナダのマニトバ大学の環境・進化生理学の教授。現生哺乳類のヘモグロビンと,絶滅哺乳類から再現したタンパク質の性質と進化を研究している。ホフライターは英ヨーク大学の生物学の教授。古代のDNAの塩基配列を用いて,その動物が環境変化にどう対応したかを探っている。
原題名
New Life for Ancient DNA(SCIENTIFIC AMERICAN August 2012)