日経サイエンス  2013年4月号

助け合う知覚

L. D. ローゼンブラム(カリフォルニア大学リバーサイド校)

私たちは,他人の唇に表れた言葉と聞こえてくる言葉を一体化しないではいられない。よく知られるのは「マガーク効果」。「ガ」という音節を繰り返し発音している人の無音ビデオを見ながら,同じ人が「バ」と発音している録音テープを聞くと,「ダ」といっているように聞こえる。また生まれつき目の見えない赤ちゃんは会話能力の習得が遅れがちだが,それは話している人の口元を見ることができないためだとみられている。これらは聴覚と視覚の結びつきの強さを示す例だが,脳は視覚と聴覚だけでなく,様々な感覚情報を常に融合していることがわかってきた。研究成果は音声認識ソフトウエアの改良など視聴覚障害者支援にも役立っている。

再録:別冊日経サイエンス255『新版 意識と感覚の脳科学』
再録:別冊日経サイエンス207「心を探る 記憶と知覚の脳科学」

著者

Lawrence D. Rosenblum

カリフォルニア大学リバーサイド校で心理学の教授を務めている。著書に『最新脳科学でわかった五感の驚異』(邦訳は講談社,2011年)がある。

原題名

A Confederacy of Senses(SCIENTIFIC AMERICAN January 2013)

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