日経サイエンス  2013年4月号

ひも理論で語る物質の科学

S. サチデフ(米ハーバード大学)

極低温になると物質は不思議な振る舞いを見せ始める。電気抵抗がゼロになって電流が永遠に流れ続ける超電導や,コップに入れた液体が自然に壁をはい上がって外に流出してしまう超流動だが,近年,こうした現象が起きたり消えたりする際に,物質中の多数の電子が「量子もつれ」と呼ばれる状態になる新現象が見つかった。それらを理論的にどう説明するか,研究者は頭を悩ませているが,意外なところから援軍が現れた。ブラックホールにおける重力の振る舞いを説明する「ひも理論」を使うと,極低温でのミクロの物質世界の込み入った状況が,すっきり見通せるというのだ。物理学では意外な分野どうしの間に,不思議な結びつきがあるようだ。

 

翻訳は東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)石原雅文氏。

著者

Subir Sachdev

ハーバード大学物理学科教授。"Quantum Phase Transitions" (Cambridge University Press, 2011年)の著者でもある。

原題名

Strange and Stringy(SCIENTIFIC AMERICAN January 2013)

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