日経サイエンス  2013年3月号

自閉症と理系思考

S. バロン=コーエン(英ケンブリッジ大学)

 他者とのコミュニケーションが難しくなるなどの症状で知られる自閉症。その要因は子育てなどの環境的なものではなく,遺伝性が強いことが1980年代には判明していたが,近年,自閉症をもたらす遺伝子群が,理系思考,つまり物事を解析して1つのシステムにまとめようとする性向と一緒に受け継がれている可能性があることがわかってきた。著者らの調査によると“オランダのシリコンバレー”と呼ばれ,理系思考の人々が多く住むアイントホーフェンの自閉症の発症率は,他の同規模の同国の2都市の約3倍だった。“インドのシリコンバレー”と呼ばれるバンガロール,さらには本家のシリコンバレーでも同様の傾向がみられるという。

 

 

再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」

著者

Simon Baron-Cohen

英ケンブリッジ大学の発達精神病理学の教授で,自閉症研究センターの所長。著書に「The Science of Evil」(Basic Books,2012年)など。

原題名

Autism and the Technical Mind(SCIENTIFIC AMERICAN November 2012)

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