日経サイエンス  2013年3月号

ペンギンの数奇な歩み

R. E. フォーダイス(ニュージーランド・オタゴ大学) D. T. セプカ(ノースカロライナ州立大学)

ペンギンは冷たい南極海を自由自在に泳ぎ回り,水深約500mまで潜って魚やイカ,オキアミを探す。空を飛ぶ唯一の機会は,水中から飛び上がって氷の上に戻る一瞬だけだ。いったいどのような進化の道筋をたどって,こんな奇妙な鳥が登場したのか,よくわかっていなかった。それが近年,古代ペンギンの化石が相次いで発見され,研究が進んだ結果,酷寒の極域に耐える能力は,地球が今よりはるかに暖かかった時代に育まれていたことが明らかになった。その祖先は,恐竜が絶滅した6500万年前の気候の大変動をも生き延びた可能性があることも浮かび上がった。そんな彼らだが,現在の急激な温暖化には適応できないかもしれないという。

 

 

再録:別冊日経サイエンス227「鳥のサイエンス 知られざる生態の謎を解く」
再録:別冊日経サイエンス220 「よみがえる恐竜 最新研究で明かす姿」

 

著者

R. Ewan Fordyce / Daniel T. Ksepka

フォーダイスはニュージーランドにあるオタゴ大学の古脊椎動物学者。ペンギンやクジラなど,ニュージーランドの海洋脊椎動物の化石を中心に現地調査と研究を行っている。セプカはノースカロライナ州立大学の古脊椎動物学者。空を飛ぶ鳥からペンギンが進化した過程に興味を持って研究している。

原題名

The Strangest Bird(SCIENTIFIC AMERICAN November 2012)

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