日経サイエンス  2013年2月号

特集:温暖化-揺らぐ常識

気候変動 想定外の加速

J. ケアリー(フリーランスライター)

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,温室効果ガスの濃度を450PPM(現在は395PPM)以下に抑えれば平均気温の上昇は2℃以下におさまり,破滅的な海面上昇のような危機は回避されるとみてきた。しかしここにきて,気温上昇が2℃以下であっても,急激な気候変動の時代に陥る危険があると気候学者は主張し始めている。

 その原因は,これまで軽視されていた「フィードバック」の効果だ。北極海などの氷が解けることによる海洋循環の変化,永久凍土の融解にともなう二酸化炭素とメタンの大量放出などが起こりうる。これらが温暖化をさらに加速することから気候変動は急速なものとなる。

 過去の気候の記録を調べると,最後の間氷期(約12万5000年前)に,海面がわずか100年の間に2mも上昇していたことがわかった。将来予測の不確実性は小さくないが,安定した気候の中で文明を育んできた人類の,急速な気候変動に対応する力は限定されている。

著者

John Carey

フリーランスライター。Business Week誌のシニア記者時代は,科学,技術,医療,環境問題を担当した。

原題名

Global Warming : Faster Than Expected?(SCIENTIFIC AMERICAN November 2012)

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