日経サイエンス  2013年1月号

サイエンス・イン・ピクチャー

浮気な働き者

R. エバリス(サイエンスライター)

 シタバチとランの花は対等な共生関係にあると,長らく信じられてきた。ランはシタバチに受粉を手伝ってもらう引き換えに香り成分を与え,オスのハチはそれを使ってメスを惹きつける。両者は「共進化」してきたと考えられてきた。しかし,カリフォルニア大学バークレー校の進化生物学者ラミレス(Santiago Ramírez)らは2011年にScience誌に発表した研究で,シタバチのほうが進化史上でランよりも先に出現したことを明らかにした。両者の関係はこれまで考えられてきたよりも独立しているようだ。

 

 ランはシタバチに非常によく適応しているようだが(シタバチが好む香りを進化させたし,ハチの体に花粉をつける仕組みもある),シタバチの方はランに適応して自らを変えてきたわけではないことをラミレスは示した。700種を超える植物から香り成分を集めており,その多くの受粉を媒介している。「シタバチと植物はみな協力し合っている」とラミレスはいう。「そして,その協力関係がどのように進化したのか,ほとんどわかっていない」。

 

 

もっと知るには…

シタバチが香り成分を集める仕組みなどに関する解説ビデオはこちら

著者

Rose Eveleth

ニューヨークを拠点に活動するフリーランスのライター。

原題名

Busy Bee(SCIENTIFIC AMERICAN June 2012)

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シタバチ