
ミッキーマウスはよく笑うが,実際のネズミは笑うことがあるのだろうか? ここ10年の動物行動学的研究で明らかになったのは,ネズミは笑う,特に若いネズミがよく笑うことだ。ディズニーのアニメーションと違って実際のネズミの笑い声は50kHzの超音波で「チャープ」と呼ばれる。この音はネズミが発する他の音声とは明らかに異なっている。人間の子どもはくすぐると笑うが,ネズミもくすぐりに弱い。特に首筋のあたりが敏感なようだ。子ネズミが他の子ネズミを追いかけてその背中に乗っかる行動などの際は,ここが標的になる。もしかしたら,ネズミの遊びに見られるこうした笑いは人間の笑いの始原的な姿なのかもしれない。
著者
Jesse Bering
心理学者,著述家。SCIENTIFIC AMERICANのほか,オンラインマガジンSlateやDas Magazin誌(スイス)に頻繁に寄稿している。北アイルランドにあるクイーンズ大学の認知・文化研究所の前所長。ニューヨーク州イサカ近郊に住んでいる。
原題名
The Rat That Laughed(SCIENTIFIC AMERICAN July 2012)