日経サイエンス  2013年1月号

笑うネズミ

J. ベリング(心理学者・著述家)

 ミッキーマウスはよく笑うが,実際のネズミは笑うことがあるのだろうか? ここ10年の動物行動学的研究で明らかになったのは,ネズミは笑う,特に若いネズミがよく笑うことだ。ディズニーのアニメーションと違って実際のネズミの笑い声は50kHzの超音波で「チャープ」と呼ばれる。この音はネズミが発する他の音声とは明らかに異なっている。人間の子どもはくすぐると笑うが,ネズミもくすぐりに弱い。特に首筋のあたりが敏感なようだ。子ネズミが他の子ネズミを追いかけてその背中に乗っかる行動などの際は,ここが標的になる。もしかしたら,ネズミの遊びに見られるこうした笑いは人間の笑いの始原的な姿なのかもしれない。

 

 

再録:別冊日経サイエンス230「孤独と共感 脳科学で知る心の世界」

著者

Jesse Bering

心理学者,著述家。SCIENTIFIC AMERICANのほか,オンラインマガジンSlateやDas Magazin誌(スイス)に頻繁に寄稿している。北アイルランドにあるクイーンズ大学の認知・文化研究所の前所長。ニューヨーク州イサカ近郊に住んでいる。

原題名

The Rat That Laughed(SCIENTIFIC AMERICAN July 2012)

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