日経サイエンス  2013年1月号

快楽の神経回路

M. L. クリンゲルバック(英オックスフォード大学) K. C. ベリッジ(ミシガン大学)

 快感は生きる上で必須の感覚だ。快感があるからこそ,食べ物やセックス,社会的交流などに関心を持ち,それを維持しようとし続ける。最近の研究で,私たちの脳内には刺激されると快感が高まる領域,いわば快感の回路が存在することがわかってきた。この回路は従来,快感覚の基盤だと考えられていた「報酬回路」とは異なる。現在,報酬回路は喜びではなく,むしろ欲求を仲介するのだと考えられている。そしてこれら両方の回路から,高次の脳領域が情報を受け取ることで,私たちは喜びと温かな満足感を意識するようになる。アルコールやニコチンなどの依存症は,快感回路と報酬回路のつながりが失われることによって生じている可能性がある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」

著者

Morten L. Kringelbach / Kent C. Berridge

クリンゲルバックはオックスフォード大学とデンマークのオーフス大学の共同研究グループ「ヘドニア」のディレクター。SCIENTIFIC AMERICANの編集顧問を務める。

ベリッジはミシガン大学でジェームズ・オールズ心理学・神経科学カレッジエイト・プロフェッサーを務めている。

原題名

The Joyful Mind(SCIENTIFIC AMERICAN August 2012)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

報酬回路快楽中枢側坐核腹側淡蒼球眼窩前頭皮質