日経サイエンス  2012年12月号

特集:「限界」を科学する

100万年かければわかること

D. カステルベッキ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 2個の原子が分子を形成するのにかかる数ピコ秒(1ピコは1兆分の1)という時間と比べると,人の一生はとても長い。だが,山脈の隆起や銀河の衝突といった多くの自然現象に比べれば,瞬きするほどの時間でしかない。
 科学者が一生をかけても解決できない問題は,次の世代に引き継がれていく。例えば医学では,それを始めた研究者が世を去った後もまだ追跡調査が続けられている長期研究が多い。現在進められている調査の中には1920年代に始まったものもある。
 史上,最も長期にわたって途切れることなくデータが集め続けられた記録といえば,古代バビロニアの天文日誌だろう。ここには紀元前1000年以降の少なくとも600年間以上の観測記録が収められており,日食や月食などの天文現象が繰り返すパターンが明らかになった。
 科学研究の多くの分野において,単に研究時間が足りないというだけの理由で,最も興味深く基本的な問題が未解決のまま残されている。ならば,もし時間という制約がなくなったらどうだろうか? 
 そこで私は様々な分野の第一線の研究者に次のような質問をしてみた。「観測や実験に使える時間がもし1000年,あるいは1万年,100万年あったら,あなたはどんな研究に取り組みますか?」 
 その面白い答えの数々をぎゅっとまとめて紹介する(未来学的な要素を排するため,使えるのは現在の最新技術までと仮定してもらった)。

著者

Davide Castelvecchi

SCIENTIFIC AMERICAN編集部

原題名

Questions for the Next Million Years(SCIENTIFIC AMERICAN September 2012)

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