日経サイエンス  2012年12月号

特集:「限界」を科学する

脳で動かすパワースーツ

M. A. L. ニコレリス(デューク大学)

 現在,コンピューター画面上のカーソルやロボットの腕を脳波で制御できている。近い将来,歩行が困難な人が全身を覆う人工装具「エクソスケルトン」を自分の脳波で制御して,優雅に歩けるようになるだろう。頭の中で「こう歩きたい」と思考するだけで,エクソスケルトンがそのように動いて歩行を支えてくれる。大脳皮質の信号によるエクソスケルトンの制御というこの離れ業は,近年開発された生体電気関連の高度な技術に基づいている。

 

 2014年のサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会は,著者ニコレリスらの計画通りに事が運べば,脳が制御する人工装具の実証の場となる。開幕のセレモニーで,エクソスケルトンを装着した10代の障害者にファーストキックを蹴ってもらう計画だ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」

著者

Miguel A. L. Nicolelis

神経人工装具研究の草分け。デューク大学医学部の神経科学の教授で,同大学神経工学センターの共同センター長を務めている。

原題名

Mind in Motion(SCIENTIFIC AMERICAN September 2012)

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